うちらももう高三やで。


それやのに、勉強せぇへんで大丈夫なんやろうか。


人の心配はえぇから自分の心配せぇ、って言われたことがあったような気もするけどな。




それからは、徐々にクラスのメンバーがそろい始める。


八時四五分、ショートホームが終わり授業の準備開始。


一時間目から六時間目まで、流れるように時間が経つ。



みんな勉強するんが嫌やって言うけど、うちにとっては勉強してる時間がありがたい。


勉強で幸太のことを思いだせへんようにできるから。



昼休みも基本はお弁当を食べたらすぐに次の授業の予習。

休み時間は基本が予習で埋まってる。


そうでもせぇへんと、苦しいし。



今日も一日が終わり、帰る準備をして学校を出る。


「実奈子、また明日なー!」


「実奈子、明日の朝宿題見せてぇな!」


「あんたは自分でやりや!」



帰るとき、教室から聞こえるみんなの声はうちを決まって笑わせてくれる。


しゃぁないな、明日宿題見せたらな。


ローファーを履き、校庭に出る。


朝と変わらず、メッチャきれいな空。


スーッと息を吸って、歩き始める。


外の空気はうちの体の中に吸い込まれて、代わりに二酸化炭素を吐きだす。



地球にはちょっと申し訳ないな。


今朝来た道を帰ってると、前を歩いている人物に目がとまった。



その人物は、あの頃と全く変わってへんかった。


今までこんなところで会ったことなんて無かったのに。


この街にまだこいつがいたなんて、思いもせぇへんかった。


うちは、そいつを見て足が動かなくなった。


三年前の悪夢が、うちの中を走馬灯のように映し出されていく。