「はぁ……お前らは」
アディルさんが呆れたように目を細め、息を吐き出す。
「副団長にしては、珍しいタイプっすね」
1人の男性が私の真横に立ち、顔を覗き込み何やら観察するようにまじまじと見られてしまう。
「いつもは……こう、金髪美人っつーかそんな感じっすよね。胸とかもこういう感じので」
自身の胸の上に、大きな丸い膨らみを作る動作をする男性の手。
(金髪美人……)
あぁ、やっぱりアディルさんは自分と同じように多勢の女性を扱ってきたんだろうと、何だか複雑な気持ちになり小さく息を吐いた。
「あきなが怖がってるだろ。そろそろ離れろ」
アディルさんが男性に向かって厳しめの声音で言い放つと、おどおどしながら男性は謝罪をして私の傍から数歩距離を取った。
「あのー、副団長。ところでこの子は誰なんすか?」
もう1人の男性がおずおずと問い掛け、アディルさんは男性達から視線を外し立ち上がる。
「全員に声をかけろ。大事な話がある」
そうアディルさんが言い放つと、2人が同時に数回掌を叩き『静まれ! 副団長から話がある』っと、その言葉が食堂全体に響き渡り今まで賑やかだった空間は静寂に包まれた。各々、持っていた食べ物や食器類をテーブルに置き、全員が素早く立ち上り姿勢を正し、アディルさんの方へと視線を注ぐ。
「昨夜は皆ご苦労だった。食事中にすまないが、君達全員に知っていてほしいことがある」
周りを見渡しながらそう口にすると、アディルさんは視線を私に落としたかと思えば、手を取られ立つように促され、唇を結び腰を上げた。
「既に一部の人間には話していることだが、この場で皆に話す。しばらくの間、この城で生活を共にすることになったあきなだ」
ぽんっと両肩にアディルさんの掌が置かれ、私にも多勢の視線が注がれる。こんな多くの人達もとい男性に注目される事に慣れていないせいで緊張感が生まれ、真っ直ぐ視線を上げていられない。
「これから話すことを、しっかりと聞き頭に入れてほしい」
ちらり――隣を窺う。私の視線に気づいたアディルさんの瞳が細め頷いた表情に、小さく頷き返す。
「あきなは、この世界や国のことは何も知らない。実は――彼女は異世界から来た」
――異世界。その聞きなれない単語を耳にした途端、ざわざわと騒がしくなり始めてしまう。すると――。
「黙れ! 話の途中だ!!」
今まで聞いたことのない声色で一喝するアディルさんの声音に、思わず肩が跳ねる。同様――誰もが唇を一文字に結び、今一度姿勢を正し誰もが言葉を待った――。



