その後――。食事中も気持ちは晴れずじまい。隣に座っていたシャンロが声を弾ませて話を振ってくれていたのに、気のない返事を返してばかりで。きっと、うまく笑みを作ることさえ出来ていなかったんだと思う。
時折、シャンロが眉を八の字にして私を見ていたようだったから。シャンロに些細な事で気を使わせてしまう私は、シャンロよりも幼く情けないと思う。
食事を終え、ここ数日で慣れ始めた1日が始まり、昨日の雨で心配していた花壇の様子を見に行って、シェヌお爺さんを手伝いに医務室へ足を運んだ。身体を動かしていたら余計な事を考えず、気づいたら陽が一番高い頂きに昇りきり傾き始めていた。
「お昼の時間……過ぎてしまいましたね。すみません、私の都合に合わせてもらってばかりで」
「自分のことは気にしないで下さい」
私の隣でにこにこと笑みを浮かべる騎士さん。今は遅くなってしまった昼食を取る為、2人で向かっている途中。昼食後の予定や雑談を交えながら歩み続けていると、前方からジョアンさんの姿が。
「あらっ。お2人で昼食に行く途中ですか?」
私達の姿を捉えたジョアンさんが、歩み寄り声を掛けてくる。
「はい。シェヌお爺さんの所でお手伝いしていたら、ついついこんな時間に」
「それそれは、お手伝い下さってシェヌ爺も助かっていると申しておりました」
「いえ。私は出来ることが限られているから、あまり役には立ってはいないんですけど。そいうえば、シャンロがお手伝いしていると、聞いたんです」
「あの坊やですね。修復作業場は危ない箇所もあるという事で、私の方でお預かりしているんです。元気が良すぎて、毎日厨房の中を走り回っておりますよ」
「ふふっ。シャンロってば」
互いに笑みを交わし合った後、ジョアンさんが小さく声を上げた。
「あの、あきな様。お食事の後のご予定は?」
「えっと……レイの所に行った後に、またシェヌお爺さんの元に戻ろうかと思ってます」
「……そうですか。あのっ大変申し訳ないんですが、レイ様の元に行かれる前に1つ頼み事があるのですが」
「いいですよっ。私でもお役に立てることでしたら喜んで!」
「ふふっ。これはあきな様にしか頼めないことですよ」
口元に指先を添えて、フワッと含みのある笑みを浮かべたジョアンさんに、首を傾げた――。



