君がいるから



   * * *


「おねぇちゃーん!!」

 ドンッドンッドンッ

 忙しい物音に重い瞼をうっすらと開く。陽射しが入り込み、まだ眠気が残る目には刺激が強くて再度閉じる。

 ドンッドンッドンッ

 ひっきりなしに響く騒音に、顔をしかめ身体をよじって上体を無理に起こす。


 ジンは昨日言った通り戻って来る事はなかったようで。ベッドを使っていいと言われたものの気が引けてしまい、ベッドサイドのチェストにあったタオルケットを借りてソファーで眠りについた。少し大きめのソファーは私には充分で、すぐに瞼は閉じ意識は途切れた。

 ドンッドンッドンッ

 ぼんやりする意識のまま、音のする方へのっそり足を向けさせる。

「おねぇちゃーん」

 聞き覚えのある元気な声と呼び方に、はたっと意識が覚め急ぎ扉を開いた――途端。腰辺りに締め付ける感覚に驚き、視線を落とす。

「おねぇちゃん、おはよう!!」

「シャ、シャンロ!?」

 柔らかくくるりと丸まった毛先、眩しいくらいの満面の笑み。

「朝食の時間だから、迎えに来たよ!」

「シャンロ、1人でここに来たの?」

「いえっ、自分がこちらにお連れしました」

 私の問い掛けに答えたのは、シャンロの背後に初めからいたんだろう――昨日付き添ってくれていた騎士さん。

「この子がどうしても、あきな様とお食事を共にしたいと」

 本来なら王の寝室であるこの場に連れていく事は出来ないと説得したけれど、シャンロがあまりにも強く懇願したらしく、ジンの許可を取ってその足で私を呼びに来たとのこと。騎士さんは今日も私に付き添ってくれると付け加えて。

「おねぇちゃんっ。早く一緒に行こうよ!!」

「うっうん。でも、ちょっと待っててくれる? 今仕度してくるから」

「申し訳ありません。休まれていたのでしょう? 急かすような事になりまして申し訳ありません」

 頭を下げ謝る騎士さんに、慌てて頭と両手を横に振る。

「そんな事っ。私が寝坊助なだけですから、頭を上げて下さい! すぐに仕度終わらせますね」

「慌てずとも、ご自分のペースで結構ですよ。自分達は待ってますから」

「ありがとうございます。シャンロ、騎士さんと一緒に待っててね」

「うん!!」

 明るい可愛らしい笑顔に癒されつつ、急ぎ準備を始めた――。