君がいるから



   * * *


 包帯や消毒液、脱脂綿、ピンセット、中瓶に入った水。諸々が入った白い箱を手にある一室の扉の前で立つ。

「こちらがアッシュ団長の自室となっております」

 騎士さんが掌を上に向けて扉を示す。その言葉を合図に一つ深呼吸。箱を片手で持ち直し、軽く掌を握って扉を数回叩いて知らせる。

「アッシュさん、あきなです。いらっしゃいますか?」

 部屋の中からの返答はない。

 もしかして部屋に戻っていないのか。それか私だと分かって返事をしないだけなのかもしれない。もう一度、扉を数回叩いてみるけど、やはり返答はないまま。

「団長はまだ戻っていないようですね」

「そう、みたいですね」

 もしも本当に戻ってないんだとしたなら、あんな状態でどこに行ってしまったんだろうか。視線を下に向け、小さく一つ息を吐き出す。

「また少し経ったら来てみましょう。その時には、戻っているかもしれません」

「……はい、そうしてみましょう」

 騎士さんが歩み始め、それに続こうと踵を返す。けれど、どうしても気になってすぐに足を止めて閉ざされた扉を見つめる。

「気になるんだったら、開けて見てみればいいだろ」

「え?」

 私の横を通り過ぎたレイが、把手に触れたかと思えば扉を勝手に開けてしまう。唐突な行動に私も騎士さんも目を見開く。

「レイ!? ちょっ勝手に開けちゃ駄目でしょ!」

「は? あんた気になるんだろ。だったら開けて確認してみりゃいい」

 それはそうだけど――勝手に入ったりしたら余計に今より関係が悪化する一方。そうこうしているうちに、中に入ろうとするレイを2人で慌てて止めに入る。

「駄目だって! まだ戻ってないんだよ、返答ないし」

「アッシュに嫌われてんだろが。だったら、居留守使われてる可能性大だ」

「いや……まぁ、そうかもしれないけど」

「それにあいつより上の立場だし、入っても何ら問題はない」

「それじゃ、プライベートなんてないじゃない! レイが王子でも少しは考えてあげて」

「煩いな。あんたが入らなくても俺は入る」

「ちょっと、レイ待っ――」

 制止も聞かずに、レイは中へとさっさと入ってしまった。閉じられようとする扉に思わず手を添えしまい、どうしようか瞳を動かし思考を巡らせ。一度瞳を閉じて騎士さんに視線を向けた。

「すいません。私も行って見てきます!」

 騎士さんの返答も聞かずに、私も中へと足を踏み入れた。