君がいるから



「あのさ、いつまでこの場につっ立てる気」

 レイの一声で、私は騎士さんに向き直る。

「私やっぱりアッシュさんの怪我が心配なので、シェヌお爺さんの所に行って薬や包帯貰いに行ってきます!」

「ですが、アッシュ団長は……」

 騎士さんは眉を少し下げて、その傍らでレイは我関せずといった表情を浮かべている。
 アッシュさんは初めから私に対して敵意のようなものを放っていた。そんな私がアッシュさんの手当てすると言ったって、聞き入れてくれるはずも近づくことさえも拒否するに違いない。でも――。

「お願いです。アッシュさんの部屋を知らないので、そこまで案内してくれませんか」

「…………」

 騎士さんに頭を下げ懇願する。

「あのさ、一つ聞きたいんだけど」

 背後から声を掛けられ視線を向けた先に、レイが壁に体を預け腕組しながら目を細めて口を開く。

「あんたさ、あいつに嫌われてるみたいだけど、そんな奴の怪我の手当する必要あんの?」

「……たしかにアッシュさんには、嫌われてるというか、警戒されてる。だからって、あんなに怪我してるのを見過ごすわけにはいかない」

「あっそ」

 自分から聞いておいて、私の答えにまるで興味がなさそうなレイ。

「あの」

「すっすいません。アッシュさんの部屋まで案内してもらえますか?」

「承知しました。まずはシェヌ爺の所へ急ぎましょう」

「よろしくお願いします」

「レイ様をまずお部屋へ――」

「いい。俺も付いていくから」

 騎士さんの言葉を切り、ただじっと私を見つめるレイ。レイの言動に騎士さんも私も一瞬言葉に詰まる。

「なに、俺が行ったら迷惑」

「……いえ、そのようなことは。レイ様もご一緒に向かいましょう」

 騎士さんが先頭に立ち歩廊を歩み始める。そして、レイ、私という順に続く。前を歩くレイの背中を見つめながら思う、毎度ながら彼の言動は理解し難いことがある。他人の事に興味はない、我関せずなレイ。理解というより、分かり合える時はくるのか。それからアッシュさんとも。
 きっと私が今行った所で怪我の手当ては簡単なものだけかもしれない、さっきみたいに拒絶もあると思う。それでも、いつかあの人ともほんの少しでも、分かり合えたらいいって願う。

 さっき横切って行ったアッシュさんの瞳が一瞬だけ。深い青の瞳は切なさを宿しているように思え、頭の中で消え去ることがなかった。