君がいるから



 ピチャッ ザッザザ

 耳に届いた音。ふいに視線を外へと移動させる。扉越しに見る外の嵐は一向に止む気配はない。

(明日、雨が上がってたらまたここに来よう。明日いい天気になりますように)

 心中でそう願い唱え、そろそろこの場から離れようと視線を前方へと戻そうとした時――。暗がりの中に人の姿のような――うっすらと浮かび上がってくるのに気づく。扉に歩み寄り目を凝らして硝子越しに見る。

「どうかなさいましたか?」

 問いかけてきた騎士さんが私の横に並ぶ。私は騎士さんに視線を移さず、暗がりの中にいる正体確かめたくてそのまま口を開く。

「はい。あのっあそこに人影のようなものが見えるんです」

「人影ですか? どのへんですか?」

「あそこです! 花壇左側の森に通じてるあたりです」

 硝子越しに指で示し騎士さんに教えて確認をしてもらう。騎士さんも一緒になって、暗闇の中を目を凝らし見る。
 次第にその姿形が現れてくる。こちらに歩み寄ってきてるみたいだ。横方に視線を移すと、騎士さんが険しい顔つきに変わっており、鞘と剣のグリップに手を添えていた。

「レイ様、あきな様。自分の背後に移動して下さい」

「はい……」

「…………」

 一瞬にして私達を纏っていた空気が一変して張り詰める。私とレイは言われた通りに、外に視線を逸らさずに騎士さんの背後に足を向けようと一歩下がった。

「万が一、ゾディック帝国の者だった場合――私の合図でお逃げ下さい。複数いる可能性があります」

「それじゃ、騎士さん1になってしまいます!」

「俺達がいた方が、かえって足手まといになる。逃げるのが賢明」

「レイ!?」

 しれっと言い切るレイに視線を送る。たしかに私1人がいることで騎士さんに足枷をつけてしまうかもしれない。それでも。

「万が一の場合はアッシュ団長……アディル副団長に知らせて下さい。私がその間ここで食い止めておきますから」

「…………」

「心配はいりません。訓練は日々欠かさず行っています。それに私はシャルネイ国の騎士の1人です」

 騎士さんの表情は背中に隠れている為、見ることは出来ない。強くはっきりとした意思が伝わる声音に、掌を胸の前で握った。