* * *
陽がそろそろ落ちていく時分。
その陽は厚いどんよりとした雲に覆われて、目にすることは出来ない。レイが言っていた通りに、夕刻の頃――大粒の雨が硝子に強く当たり主張し始め、地に弾けるような音をたてる。ざわざわと草木を揺らす風もまた強い。
ジョアンさんからシェリーの過去を聞いた後。私とレイは特に会話も交わさずにお茶を飲みあの部屋で時間を潰した。それから、レイは自室へ私はシェヌお爺さんのお手伝いに向かった。
シェヌお爺さんの元へ辿り着くと、怪我で治療中の騎士さんや疲れからだろう体調を崩したメイドさんの姿が。指示を受けながら、お手伝いをしていく内に陽が沈む時間帯になっていたのに気づき、本日の手伝いを終えた。医務室を出て、今は歩廊を歩いている所だ。
「また雨かぁ。風も強くなってきたし、あの花壇平気かな……」
元の通りとまではいなかったけど、折角みんなで直したあの花壇や庭が気になってしまう。花壇には余計な水分が入らないようにと、作業を終える頃、シートを掛けてはいたけれど。
「ちょっと、様子を見に行ってみよう!」
途端、足を止めて体を方向転換させたら、アディルさんの命を受けて傍についてくれている騎士さんが目を丸くしている。
「どうかなさいましたか? 突然声を上げて……」
「ちょっとだけ寄り道してもいいですか?」
「はい、問題はありません。自分はどこでもお供しますが――どちらへ?」
* * *
ガタッ ガタッガタッ
今にも割れてしまうんではないかと思わせる程に硝子扉に当たる強風。その扉に手を添えて、硝子越しに外へ目を向ける。暗くよく見えないけれど、カバーはどうやら飛んでないようだ。
「今のところ大丈夫そう……よかった」
それでも昼間――綺麗に整えた庭には無数の葉や木の破片などどころからともなく舞い込んで来てはまた散っていく。今夜中に止むといい――と願ってしまう。
「そんなに心配なさらなくてもいいですよ。花壇のカバーには杭もあらゆる方面に打ち付けて風にとばされないようにしてあります。明日晴れればまた掃除すればいいだけですから」
「ですよね……。すいません、寄り道してしまって」
「いえ。明日はきっと晴れます」
「はい。そうですね」
騎士さんの優しい声音と笑顔に私も返す。何事にも心配をしてしまう私は父さんに似たんだろうと含ませて。



