「あきな様、申し訳ありません。シェリーがあのような失礼な態度を……」
シェリーの姿が見えなくなった後、1人のメイドさんが傍に寄り声を掛けてきた。
「いえ……私は気にしてません。でも、シェリー一体どうしたんでしょうか。何だか心配で」
「私共はあのような表情をするシェリーを見るのは、初めてです。あの子はいつも強気ではありますが、色々と辛い時期があったとジョアン副長からお聞きしたことがありました」
「辛い時期……?」
「あっすみません。そろそろ作業を開始しましょう! 暖かい内に終わせなければ」
メイドさんは私の問いに慌てて話しを変え、そそくさと傍から離れて行ってしまう。
(シェリーのつらい時期。聞いたらいけない事だったのかもしれない。アディルさんにあんなにも懐いてる理由もそれに関係してる……?)
涙を流すほどアディルさんを慕っているシェリー。私に強気に向かってくるシェリーが印象強く、さっきの大粒の涙が私には衝撃的で。
「おい」
「っはい!」
突如、背後から声を掛けられ驚きで体が反応。振り返った先には、レイが不機嫌さをあらわに立っていた。
「手を休めんな。この後、夕立が来る」
「夕立? こんなに良いお天気なのに」
「この時期は夕立が起こりやすい」
「へぇ~そうなんだ」
周りを見渡すと、いつの間にやら数人の騎士さんも加わわっていて、手早く作業をこなしている。皆、レイと同様に夕立がくる事を予想して、急いでいるよう。私もゆっくりやっている暇はなさそう。
「あきな様」
「はいっ」
再び背後から声を掛けられ、振り返るとそこにはジョアンさん。
「ジョアンさん!」
「作業中、声をお掛けしてしまって申し訳ありません」
「そんなことないですよ」
「というか、さぼってるあんたが言う台詞じゃない」
レイに鋭い突っ込みをされ、ははっと軽く笑いでごまかす。ジョアンさんが足を折り、苗を植えているレイに微笑む。
「レイ様。本日はお手伝い下さり、ありがとうございます」
「……別に。暇だったからしてるだけ」
「左様でございますか。ただ、ご無理だけはなさらないで下さいまし」
ジョアンさんの優しくて柔らかな声にも、レイは黙々と手を動かす。それでも、ジョアンさんはそんなレイの姿を微笑んで見つめたのち、私にその笑みを向けた。



