コンコンッ
寝室の向こう側の扉の方からノック音がしたかと思うと、部屋の中へ入る旨を伝える声。扉が開く気配と共に陶磁器の振動音が隣室で響き渡ってくる。鳴りやむと、次にヒール音がだんだんとこちらへと向かってきて、隣室とをつなぐ開かれた戸から姿を現した人物は、こちら側へ入る前に、普段通りの頭を下げる。
「ジン様。まだお休みの所、失礼致します。お食事をお持ち致しました。隣接にご用意させていただきます」
声の主が、頭を上げ――互いの目が合う。
「あっあきな様!?」
「ジョアンさん!」
「何故、こちらに!?」
同じベッド――しかも至近距離にいる私達にジョアンさんは目を大きく見開き、とても驚いた様子で、こちらへ入る挨拶を口にして、私達の元へ。
「あ、いや、その」
(何だろう。何もないのに、すんなりと言葉が出てこないのは)
「こいつの部屋の通路が脆くなってると、昨日報告を受けたからな。修復が完了するまでの間、ここで体を休めろと俺が言ったんだ。昨夜、伝えてくれと言ったんだが、報告は聞いていないか?」
なかなか言葉にしない私の代わりに、ジンが事の経緯を話す。
「ご報告はお受けましたが、まさか……ご一緒に?」
「ごっ誤解しないで下さいね!? 何もありませんよ、本当にっ」
慌ててベットから飛び降り、ジョアンさんに誤解のないように両手を思いっきり左右に振り弁明。私の慌てぶりに、ジョアンさんがプッと声を漏らす。
「ふふっ。そんなに力いっぱいにおっしゃらなくとも、私は分かっておりますよ」
「まったくだ。誰がどう誤解をする」
私の背後でジンの盛大にため息を漏らす声が聞こえた。
(朝っぱらから、1人で空回りしたりベッドから落ちたり――恥ずかしすぎる)
* * *
「それでは、私は失礼いたします」
ジョアンさんと付き添いのメイドさん達が、折り目正しく腰を折り部屋を出て行く。
用意してくれた朝食をとりながら、ジョアンさん達とちょっとした談笑も交えて、ゆったりとした時間を過ごした。そうして、再び2人だけになった部屋で、互いに向かい合いながらソファーに腰を下ろしている。
ジンはテーブルに広げられた幾枚もの紙に書かれた文字を、眉間に皺を寄せ難しい顔つきで目を通していた――。



