君がいるから



 私の頭上にいる気配の正体。動揺を落ち着かせよう、何度試みても無理な話。

(何で一緒に王様が寝てるの!? 隣に寝ればいいのに……じゃなくて、何故同じベットで!?)

 自身の部屋に何故――一瞬、頭の中に浮かんだものの、辺りを見回す。そこで、寝ぼけた思考は、ようやく昨日の事を思い出す。

(そうだ、ジンの部屋だ。私が借りてるっていう方が正しい……そもそも私はいつジンの寝室に来たんだっけ? 全然記憶に無いし、全然覚えてない!!)

「ん……んん……」

 私が動いてスプリングが大きく跳ねた時、声が耳に届く。忙しなく動かしていた脳内を一旦止める。どうやら、目を覚ますことはなかったようで、気持ちよさそうに寝息を立てている。
 そこで、ジンは何も体に掛けず寝ていることに気づき、自分が今さっきまで掛けていたブランケットを静かに手繰り寄せる。ブランケットをそっと掛け、距離を取ろうとした――ふと目に入るジンの寝顔に動きを止めた。

 漆黒の前髪がさらり――落ちて。私よりも白くて綺麗な肌を食い入るように見る。

「睫毛、長い。羨ましい……」

 今は閉じられている瞼から一際目を引くのは、睫毛。男性の睫毛をこうまじまじと――それも間近で見る機会はない。漆黒の前髪がさらり、また落ちてきて瞼を隠す。それがくすぐったいのか、瞼がぴくりと反応して。

「髪もとっても綺麗な黒」

 瞼にかかった前髪を、無意識にそっと指で触れるて払う。指から零れ落ちるジンのさらさらな髪。染めている私の髪とは大違い。

「本当にとても綺麗……」

(何故、こんなにも惹かれてしまうんだろう)

 指から零れた髪をもう一度払う為、触れよう――。

(……瞳)

 私の瞳に映る――漆黒。このまま、吸い込まれてしまいそう――。

「いっ! ☆**☆※※※☆☆*っ!!」

 ドスンッ!!

 言葉にならない声を出しながら、勢いよく後ずさった。言葉の後の派手な音は、慌てて距離をとった為にベットから転げ落ちた証拠。それも、頭から。

「い……ったぁーいっ」

 腰は曲げたまま、足を天井に向けた状態で頭を押さえ、顔を歪ませて苦痛の声が漏れる。

「まったく……朝っぱらから騒がしい奴だな」

 そんな言葉が聞こえたと思ったら、力強い手によって引っ張り上げられた。