君がいるから



   * * *


 時は刻一刻と流れる。
 地面を叩きつけるように降り続けていた大粒の雨は、いつしか小さな粒へと変わっていた。
 青々しい葉の上には溜まった雫。重さに耐えられず、重力に従い雫を落とし、反動で大きく上下に振れる。どんよりとした灰の雲は風に乗り次第に流れ、雲と雲の隙間が生まれ柔らかな光が一筋に漏れ出す。それを辺りに知らせるように、鳥達は飛び立ち鳴く。




 敵襲にあうまで、色とりどりの草花が咲き誇っていた庭園。この場に立ち尽くしたままの男の姿がある。男はいつからそうしているのか。口に出さずとも、その男の姿を一目見れば分かってしまうだろう。
 髪は水分を多く含み、毛先から幾度となく落ちていく雫が物語っている。肌に吸い付く着衣からもまた落ちては、地へ吸収されていく。
 男は何を思っているのか、俯きその表情は窺うことは出来ない。すると、ふいに男の濡れた形の良い唇が形作る――。

「――ィ――ナ」

 だが、それは。雨に冷やされふと吹いた風に攫われて行く。光にあたり輝く濡れた髪を揺らしながら。