私達は少し気まずい雰囲気が漂う中、ジンが咳払いをし、私はふと手に当たった携帯を手にした。
「あぁ……そうだっ。おっ音楽でも、き、き、聴こうかな」
少しぎこちなく言葉にして、携帯を操作し出す。電池もまだ残ってるし何とか聴けるかもしれないと、最後に中央のボタンを押す――。携帯のスピーカーからバラード曲が流れ出し、そして澄んだ声音が曲と共に奏でる。窓外から微かに聞こえてくる雨音をかき消す。
「お前の国の歌か?」
その声にふと見遣ると、ジンはいつの間にか瞼を閉じていて、歌に耳を傾けている姿があった。
「すごく人気のある歌手なの。すごく声が澄んでて綺麗でしょ?」
「あぁ、そうだな」
「嫌なこととかあっても、いつもこの歌手の曲を聴いたら、心が自然と和むんだ。この曲は私の一番のお気に入り。この国にも歌手とかいる?」
「あぁ。多くは旅芸人だが。その中でも、ガディス中で有名な歌い手がいる一座がいて、シャネルイにも幾度となく来訪してくれている。時期的には祭りの時期が多いな」
「へぇ~。見てみたいなぁ」
「もう少しすれば、その祭りの時期になる。その時も来訪してくれる予定になっているぞ。その時には城下町におりて、見に行ってくればいい」
「本当!? やったぁ。楽しみだな~」
私はソファーの背凭れに背中を預ける。ジンをチラッと盗み見て、瞼を閉じ曲に耳を傾けているようで、私の頬は自然と緩む。流れ出てくる澄んだ歌声の曲を聴く内に、ゆっくり瞼が下りてくる。柔らかく瞼が閉じた時には、体に力が入らなくなっていく感覚に、ソファーへかかる重みでより沈む。
(いつもより心地良いと思えるのは、何故なんだろう。あぁ、すごく――)
* * *
あきなが手にしている小さな箱から流れ出ている曲に聞き入っていたら、ふと肩に重みを感じる。確認の為見遣る――その正体。
「あきな……?」
問いかけても、自身の肩を数回動かしてみても返答はない。それよりも一定の呼吸音が小さく聞こえてくる。
「寝てるのか」
それにしても、笑ったかと思えば瞳を潤ませ顔を赤に染める。かと思えば、今度は人の肩に頭を預けて寝息を立てて。
「変な奴だな」
呟き、口端をゆるやかに上げる。気持ちよさそうな寝顔を見ていると、無理に起こすのも気が引けてしまう。



