君がいるから



 ジンの姿に口端を上げながら、ガラステーブルへと視線を移す。すると、目の前に置かれたティーカップがあることに気づき、そっとカップを手に取り口をつける。
 口の中に広がったのは、いつも甘いミファとは違う――ほんの少し残る苦味。さっきまで、口の中を甘いものが広がってたから、この苦味が丁度いい。何処か元の世界でも飲んだことがあるような――。

 静まり返っている部屋の窓外では、未だに大雨が降っているのが、ガラスを通して分かる。この静けさに、だんだんと瞼が下りてきそうになる。

 カチッ カチッカチッ

 微かに聞こえてきた音に、首を傾げながら視線を動かす――。

「ちょ、ちょっと、ジン!?」

 慌ててジンから携帯を取り上げる。知らないうちに、ボタンをカチカチ押して操作していたジン。
 使い方も分からないだろうけど、万が一メールとか表示したとしても読めないとは思うけど――ついつい乱暴に取り上げてしまった。以前、リビングに置きっぱなしにしていた携帯を、意地悪コウキにいじられていた時があったのを思い出す。

「何だ?」

「ごめん、大きな声出して。驚きすぎだよね……はははっ」

 そう言った私の様子に、ジンは理由が分からないよう。それもそのはず――一度深呼吸。ふと画面を見遣り、そこには1枚の写メが表示されていた。

「そこに写ってる男は……あきなの将来を約束した人か?」

「うぇっ!? 将来を約束!? って、突然何の話?」

 今一度画面を見たら、そこに映し出されていた人物に可笑しくなって、思わず吹き出してしまった。

「この男の子? ないない。秋山となんて考えたこともないよ」

「俺はそんなに可笑しなことでも言ったか」

「ううん。可笑しいっていうか――どうして、秋山見てそう思ったの?」

「いや……何となくだ」

 由香と秋山と3人でなんともなしに撮った写メ。私と由香で秋山を挟んで並んでる画面をジンに再び向けて、まず由香を指で示す。

「すごく綺麗な子でしょ? オシャレが大好きでしっかり者の親友の――この子は由香」

「ほぅ……」

「こっちの私の隣にいるのが秋山。私の唯一の男友達。優しくて友達思いの男の子」

「…………」

 ジンは小さく頷き、画面と私を見比べ始めた。

(え? 何?)

「楽しそうだな」

 ぼそり呟いたジンの言葉に、首を傾げ見遣る。