君がいるから



 その場の雰囲気に困って、さっき渡された自分の鞄を開けて中を弄る。中のポケットのファスナーを開けると、カサッと指にあたる感触に頬が緩む。

「あった!」

 声を上げ、拳を握り締めて、そのまま腕を伸ばす。

「……何だ?」

 小首を傾げるジンに私は両の口端を上げて見せ、握った拳を彼の目の前で、そっと指を広げた。

「……これは?」

「私がいつも持ち歩いてたお菓子。ちょっと小腹が空いた時にでも食べて。口に合うかどうか分からないけど」

 私の掌に乗っているのは、飴玉二つと小包装されたチョコ。授業中、小腹が空いた時にこっそり食べていた残り。
 本当はいけないと分かりつつも、こっそり授業中に由香と交換もしたりして。

「この2つは飴玉。苺ミルクとレモンティーの味で、こっちのは中にクッキーっぽいのが入ってるチョコ」

「全部、甘そうだな」

「たしかに全部甘いね。えっと、他に甘くないのがあるかな」

 また鞄の中をゴソゴソ探ろうとすると、差し出したままの掌にそっと何かが触れる。
 視線を上げたら、そこには微笑を浮べるジンの指先が、私の掌に触れていた。

「ありがたく、受け取っておく」

「甘い物でも大丈夫? って言っても、それしかないみたい」

「これがお前の国の食べ物か」

「うん。こっちとあまり変わらないのもあるよね」

 鞄からもう一つ、ジンと同じチョコを取り出して袋を開けると、口に放り込む。口を動かしクッキーを砕く。

(これ、たしか……由香に貰ったものだ)

「それ、何だ?」

「ん?」

 ジンが何やら指差すのを辿る。先には、私の鞄の外ポケットから少し飛び出た。

「あぁ、これ? これは携帯電話」

「ケッケー、イ、デ……何だ、それ」

 ストラップを揺らしながら取り出したのは、私の携帯。ジンは聞き慣れない言葉に、小首を傾げ続ける。その姿に、自然と口元が綻び、少し彼との間隔を詰め座り直し、折りたたみ式の携帯を開いて見せた。

「光ってる……お前が映ってるな」

「この前、プリクラ撮った時のを待ち受けにしてるんだ」

「プ、プリ……ってのは、何だ?」

(あっ頭こんがらせちゃったかも)