君がいるから



 右足をソファーに乗せて腕を組み寛ぐ姿と、漆黒の瞳の眼差しに少し緊張する。

「あきな、家族は」

「父さんと、それから弟が1人。弟はレイと同じ歳」

「そうか。指輪をくれたという、母上はどうした?」

「母さんは私が14歳の時に病気で亡くなったの」

「……そうか」

「そんな顔しないで? そういえば、ジンとレイのお父さんとお母さんは?」

 ジンの和らいだ表情は打って変わり、切なげで何処か悔しさを含んだ表情を浮かべてしまう――ジンが国王ってことは、既に前国王――お父さんはもう。健在なら、私は既に会っていなければいけない存在。自分は無神経だったと、慌てて別の話題を探す。

「えっと……えっと……」

「俺達の父上と母上は、俺が6つの時に――暗殺された」

 ジンの口から発せられた言葉に、一瞬――息が止まるような感覚。そうして、目を伏せたジンはゆっくりと口を開き"その時"の事を1つ1つ思い出すように話始めた。




   * * *




 紅い月が一層輝く――静寂が漂う時間、俺は1人部屋で寝ていた。そして、城の者達の慌しい足音で目を覚ました。
 部屋から出ると、大人達は血相を変えながらある方向へと走り去って行く。俺は幼いながらも胸騒ぎを覚え、皆の後を追った。行き着いた先には、目を覆いたくなるほどの光景が広がっていた。辿り着いた場所は、父上と母上の寝室――まだ俺よりも遥かに幼いレイも一緒だった。部屋から鉄臭い匂いが鼻をつき、無惨にも赤に染まる両親の姿が目の前に横たわっていたんだ。その横で奇声に似た声で泣き叫ぶレイの姿。シェヌや騎士達が父上と母上の名を呼び、懸命に救命しようとしていたが。既に手遅れだった――。




「俺はただ、その場に立ち尽くしているしかなかった。何も出来なかったんだ」

 ジンは手の甲を額に当て、そっと顔を伏せる。漆黒の髪と手に隠れた表情は、私からは見えない。彼がどんな表情しているのかは、ただ何となく――。

「ジン……」

 どう彼に声を掛けていいのか、言葉がすぐには見つからなくて口の端を結ぶ。

「誰が何の目的があったのか、現在でも分かってない」

「…………」

「ただ……あの日の事件で、レイの心の奥深くにあの日の出来事が刻み込まれた。いつからか感情を出すことが出来なくなり、今ではああして1人部屋に引きこもり、他人(ひと)と接する事を拒むようになった」

(……そう、だったんだ)

 あの時、レイは脅えていた。心の奥深くに眠る残酷な記憶。

「すまないな」

 顔を歪めながら俯いていた私に柔らかな声音が耳に届き、視線を上げる。漆黒の瞳の眼差しと出合い、ジンの口端が上がった。

「何、俺が喋ってるんだろうな? お前の話を聞こうとしていたのに。すまない、今の話は忘れてくれ」

「……う、ううん」

 二人の間に重い空気が漂う。

(かっ会話が……)