「私の……荷物? どうしてジンがこれを?」
小首を傾げる私の隣に、ジンはソファーの背凭れを跨ぎ超えて、腰を下ろし足を組む。
「お前の部屋の通路が脆くなってると、さっき報告を受けた。修復が完了するまでの間、ここで体を休めろ」
(部屋に戻ってなかったから、気づかなかった)
「あっでも、ここ部屋って誰か使ってるんじゃない? 私がここにいるわけには……」
「心配は無用。ここは俺の部屋だ」
「なんだ、ジンの部屋か――って、へ!? 通りで他の部屋よりも広くて装飾品が更に豪華だと思った。だったら、尚更ここにいるわけにはいかないよ!」
「俺が良いと言ってるんだ。それに、使える部屋は怪我人や何やで使える部屋は全て使用している。あの、盗賊達もいるからな」
(いっ……いいのかな? いやいや、良くない)
様子を見に来た時だって、アッシュさんに拒否されていたのに、これが知られたら怒られるどころではない。それに、ここに来た時に寒さを少しでも和らげようとして、下ばかりを見ていたから全然気づかなかった。
「……やっぱり、ここにいるわけにはいかない」
「俺が良いと言っているのにか? 俺の部屋じゃ不服か?」
「そっそうじゃなくて! アッシュさんが……っというか、これが知られてしまうと皆が良く思わないというか……」
「アッシュが? 城の者が良くは思わない理由とはなんだ?」
「…………」
漆黒の瞳が私を捉えて離ずに、ジンは私の言葉を待っている。何故と言われても、一番それを知っているだろうジンが聞いてくるものだから、困ってしまう。
「とにかく、今日はここで体を休めろ。いいな」
「……とりあえず、一晩だけお世話になります」
何と断っていいか分からず、つい応えてしまった。横目で視線を送りながら言い、ジンは背凭れにゆっくりと体を預け額に右腕を乗せた。
(少し顔色悪いな……やっぱり、まだ安静にしてた方がいいんじゃ)
「ジン……? あの」
「お前のいた世界って不思議なものが溢れてるんだったな」
ふいに投げ掛けられた質問に、瞬きを数回繰り返す。
「なんだ、そんな顔をして。何か可笑しなことでも言ったか」
「……あっううん、そんなことないよ。ただ――突然どうしたのかなって」
「もう少しお前の話を聞いてみたかったんだ。俺たちの知らない世界があるなんて、今でも信じられない部分もあるからな」
「実は私も。小説とかアニメとか想像上でしか存在してないって思ってて。自分がそんな主人公達みたいな事を身を持って経験するなんて、今でも信じられない」
私がそう言って小さく笑うと、ジンは背凭れから肘掛に背を向け寄りかかり、視線を真っ直ぐに向けて。



