君がいるから



    * * *


「お~い。だぁれか、酒ぇ持ってこいよっ足りねぇー、満足……ヒック……出来ないんだぁ、おりゃーよー、ヒック」

「あっ!! てっめー、今ズルしやがったな!!」

「ってか誰だ!! こんな所に食いモン置いたやつぁ!? 思いっきし、踏んじまったじゃねーかー!!」

 ギャーギャーとガタイの良い男達は、ガサツな物言いで口々に馬鹿でかい声で騒ぐ。
 ここ――男達が今いる場所は城のある一室。あきなの部屋とそれ程変わらない広さの部屋のようだが、男達のでかい図体のせいか何処か狭く感じられる。床に雑に寝転がり食べ物を口に運ぶ者、カードゲームを楽しむ者、大きな酒瓶の口からそのまま豪快に飲んでは顔を赤らめ呂律が回らない者など様々。
 数日の作業の疲れで、いびきをかきながら深い眠りについている者もいるが、宴会騒ぎをしている輩たちによって、それはかき消され誰も気に留める者はいない。何はともあれ、それぞれが休息の一時を満喫しているようだ。

 その中で一際目立つ赤髪の人物は、ただ1人――ソファーに体を伸ばし横たわる姿がある。固い床に横たわる男達とは違い、柔らかなソファーの上にいるというのに、男の表情は何やら胸に溜まっているであろう感情を隠しもせず、眉間に刻まれた皺が一層濃くなった途端。

「だぁー!! マジ、うざってーなっ、この野郎っ!!」

 足や拳で、ドンドン――っと数回ソファーを叩く蹴るを数回繰り返し叫ぶ男――ギル。向かい合わせに置かれたソファーに背を預けながら腰を下ろし、片足を立ててお猪口のようなグラスに入ったお酒にゆるりと口をつけているのは、ウィリカとネゼク。この一角――周りの騒ぎとは真逆の空気が流れているかのよう。

「はぁ……また、お前は。何度言えば気が済むんだ」

 ギルの言葉を右から左へと聞き流すようにウィリカが一言、ネゼクは酒を注ぎ聞かぬふりをしているようだ。2人の様子からして、幾度もこの行為と言葉を連発していることが窺える。

「うざってー! うざってー!! こんちきしょーっ、この俺様をこき使いやがって!!」

「煩い」

「ウィリカ。こいつをどうにかしてくれ。酒がまずくなるぜ」

「ネゼク……そのままお前に返すよ。俺が言ったって聞く耳持つわけないだろう」

「俺もそのまま返す」

 2人はぁ……っと息を吐き出し、再びグラスの酒を口に含んだ。

「おーっおまいらぁ。なぁんで、そんなちっこい奴で呑んでるんだぁ? 酒は豪快に飲むのがいいんだぜー」

 っとそこへ、またもや面倒な奴が来たと2人は心中で囁いた。