君がいるから



 思えばあの日に遡る――。


 アディルさん達が走り去って間もなく、ジンは意識を失ってしまった。私だけではどうしていいのか分からなく、辺りを見回し誰かに助けを――と焦る中、騎士さん達が数人駆けつけてくれた。
 それからのジンは朝も昼も夜も、ただただ眠り続けた。気を失っていたジンの顔色は青白く、触れた肌もとても冷たく、その場にいた全員が、まさか――と息を呑んだ。
 騎士さん達がシェヌお爺さん元へと運び込み、シェヌお爺さんは青白い表情とベットにぐったりと横たわるジンの姿を目にして、一瞬目を見張った。すぐに、脈などを確認しシェヌお爺さんの、命に心配はない――という言葉に、その場にいた一同の緊張の糸が緩んだ。ただ、いつまで眠り続けるのかさえ、お爺さんでもはっきりとは分からないと、最後に言葉を付け足す。
 そして、ジンは自室へと移され、その後――私は心配で何度かジンの部屋へと足を運んだものの、やっぱり国の主の部屋に入ることは許されることがなかった。
 一度、ジンの部屋へ向かう際に、アッシュさんに呼び止められてしまい。

「お前の心配など不要、部屋にも近づくな」

 きつく言われ、私がジンの元へと訪れることなく時間が過ぎていた――。




 未だに眠り続けているだろうと思っていたジンが、自分の目の前にいて驚かずにはいられない。

「お前さ」

「へ?」

 驚く私に構わず、ふとこちらへ伸ばされた腕にすっとんきょな声を上げ、ジンの指が絡めとった茶がかった自分の毛先が目の前へ。

「何で、こんなずぶ濡れなんだ。風邪引くぞ」

「ええっと、これは……その。って、そっそんなことよりもっ」

 指先を私の髪から離し、ジンの手を自分の掌で包み込むと、次第に伝わってくる体温に胸を撫で下ろす。

「顔色も戻ってる。それに体温も戻ってる……あったかい」

「あったかいって……お前の手が冷たいだろ」

「うぇ? ……ふへっくしゅ」

「服のまま、風呂にでも入ったのか。お前の世界ではそうなのか?」

「そっそんなわけなっ……へっくちっ」

 くしゃみが止まらぬ私を前にして、1つため息をつくジンは少し呆れた表情。だけど、すぐさまパッと顔を背け、掌で目元を隠すジン。
まるで、私を見ないようにしているよう。

「あの……ジン?」

「とりあえず、俺と一緒に来い。そのままだと、風邪を引かぬとも言えない」

「ありがとう。でも、もう自分の部屋に戻る途中だから。このまま戻ったらすぐにお風呂に入るよ」

「いっいいから、俺についてこい」

 少し焦った――というか、ちらりと垣間見たジンの頬がほんのり色づいているのは、蝋燭に灯った火のせいなのだろうか。