君がいるから





「へっくしゅんっ……靴の中、ぐしょっぐしょ」

 ギュシュ グシュ
 
 一歩踏み出す度に、何とも言えない気持ち悪い感触に顔が歪む。

「ふぇー……っくしゅん。うぅ……さっさむい」

 自分でもどのくらい、あの雨の中にいたのか分からない。我に返った時には、体は芯から冷えきっていて。当然のごとく、全身ずぶ濡れでさっきからくしゃみが止まらず、寒さで歯もかたかたと小刻みに鳴る。

「シャツの下……絶対透けて見えるよね、これ」

 胸元で組んでる腕をそっと離して見下ろしたら、ペッタリ布地が肌に張り付き、自分の肌の色がうっすら透けていた。スカートはたっぷりと雨水を吸い込んでて重い。

(この姿を誰かに見られでもしたら……はっ恥ずかしすぎる……)

 それを隠すのと、少しでも寒さを凌ぐ為に腕を組んで体を丸め、なるべく早足で通路の角を曲がろうとした時。

 ドンッ!!

「ぶふぅっ!!」

 顔面全部に強い衝撃をを受け、そのせいで変な声がこごもり出た。結構強くぶつかったお陰で、じんじん来る鈍い痛みを治めたくて、掌を当てて一歩後ずさる。

「い……ったぁーい! もう、なんなっ――」

「お前は人に体当たりするのが癖なのか?」

「……え?」

 突然、頭上から降ってきた声。視線だけを上げたら、私を見下ろす漆黒の瞳がそこにある。

「うぇっ、ジン!?」

「ちゃんと前を見て歩け。そのうち怪我するぞ」

「あぁ……うん、ごめんなさい」

 腕を組んで少し頭を傾けるジン。怒ってるとかそういう感じではないけど、まさかこんな所にジンがいるとは思っていな――く――って。




「ジン!?」

 彼に向かい唐突に声を上げたら、ジンは目を丸くし驚いた様子を見せる。

「なっなんだ?」

「どうして、こんな所に!? 体調は!? えっ! 歩いて大丈夫なの!? っというか、いつ目が覚めたの!?」

 ジン答える間もなく続けざまに喋り、ガシッと目線の先にある両腕を掴む。私がこんなにも驚き声を上げるには、理由がある。