* * *
ザァー ザァー ザァー
歩廊の乾いた空気に、反響する強い雨音が少し耳につく。その音に混じるように、一定のリズムの自分の靴音。
「はぁー……」
息を何ともなしに1つ吐く。ふと、横方へ視線を移したら、庭先へ通じる硝子戸が目に入った。私は立ち止まって、おもむろに腕を伸ばし押し開く。
暗がりの中――雨粒は目に見えないけれど、音とテラスの雨避けの天井から途切れることなく、滝のように流れ落ちてくる水量が激しさを物語っている。
「すごい雨……。でも、雨のおかげで皆、少しは休めるんだよね」
少し肌寒さを感じたものの、私はその場で腰を下ろして膝を抱えた。それから、ゆっくり瞼を閉じ思う。
(何もかも――夢を見てよう)
でも、これまで目にしたものも触れたものも――全て現実。小刻みに体が震え始め、両の手に力が入り始める。
そうして、ふいに頭を過ぎっていくのは、たくさんの人が赤に染まって倒れていた姿、その人を想い崩れ落ち泣く姿、焼け崩れ落ちた家屋。自分の目に移った様々な光景が、スライド写真のように過っては消えていく。
「…………っ」
こうしてふと1人になると、この3日間ずっとこの感覚に支配されていた。頭を振り追い払っても、追い払っても――また戻ってくる。指先に一度、強く力を入れて立ち上がって。気づいたら――バシャバシャ水音をたてながら、降り頻る雨の中へと自ら飛び込んでいた。素早く動いていた足がどんどん重くなり、次第に速度が落ちて、足を止める。
「……冷た、い」
大粒の雨は容赦なく私の全体を濡らしていき、そうしていくうちに力が入っていた肩がゆっくりと下がっていく。空を仰ぐと、激しく打ちつけてくる粒が肌に当たり、少し痛みを感じるものの、さほど気にすることもなく目を閉じる。
私の中から全て――あの感触も、脳裏に焼きつく光景も、全部洗い流してくれる。そんな気がして雨に当たり続けた。



