君がいるから



「はいはーい質問っ。1つ聞きたいことがあるんだけど~」

 重々しく漂う雰囲気に不似合いな声音のハウィーが辺りに広がる。その刹那――ラスナアの目つきが鋭くなる。だが、シュヴァルツは表情を変えることもせず、ハウィーを見遣った。

「何が聞きたい」

「この前のなんだけど。僕は1つも納得してないんだ」

「ほぉ、何を納得していないと言う?」

「あのまま王様と遊ばせてほしかったのさ。これからだ――って時に、こいつが止めるんだもんね。それにさ、どうしてこの人まで来てるんだって話」

 ハウィーは不満げな表情で、真隣にいるエグザへと視線を注いだ。その視線を知ってか知らずか、エグザはおもむろに瞼を開く。

「僕1人でやらせてくれるんじゃなかったのかよ。しかも、すっげー面白いもん見れたのに」

 まるで、子供のように口を尖らせたハウィーは、肩を大袈裟に落とす。すると、重低音のシュヴァルツの声が響く。

「ハウィー、面白いもの――と言ったな?」

「あぁ、うん。見た目はさ、よわっちそうな王様が急に……人格が変わって!!」

 その時を思い浮かべてか、ハウィーの口調と表情は玩具を与えられた子供のように興奮しているように思える。

「……我はそれを待っていた」

「は?」

「お前なら、必ずや"我が望むもの"を引き出してくれると確信していたのだ」

 シュヴァルツは言い終え、おもむろに立ち上がって背後にある窓外へと目を向けた。シュヴァルツが口にした言葉の意味が分からず、ハウィーは不思議そうに首を傾げる。

「何の話してんのさ、あんた大丈夫?」

「ハウィー!! 先ほどから貴様の言動は目に余る! シュヴァルツ様に無礼な物言いはやめろ!!」

 ラスナアは声を張上げ、身を乗り出す。

「ラスナア」

 だが、すぐさま重低音の声音に制され、ぐっと唇を噛み締めた後――頭を下げ体勢を整えた。

「失礼を……致しました」

「ラスナア」

「はい」

「次はお前に動いてもらうとしよう」

「シュヴァルツ様の仰せのままに」

 胸の前に腕を添え、深々と頭を下げるラスナアは唇を一層引き締めた。