君がいるから



   * * *


 コンコンコンッ


 コンコンコンッ


(もう……また……か)

「入りまーすっ」

 カチャッ ギーッ

 扉の握りをゆっくりと回し、そーっと押し開く。一度、中を覗いた場所は薄暗く、辺りを少し細めた目で見渡し足を踏み入れた。
 ――ここ3日間、幾度と訪れた部屋。

「あれ? ここにいない――っということは」

 扉を静かに閉め、薄暗い中に次第に慣れてくると、物の形などが見え始めて来る。例えば、床に散乱した本の塔。

「……あっちかな」

 部屋の中を注意深く歩く。

(ここ、掃除しなきゃ駄目だなぁ。若干――どころじゃないか、かなり埃っぽい。これじゃあ、具合も良くなるものも良くならない)

 足元に散乱する本、薄暗く空気が淀んでる部屋――ほんの少しいるだけで気分が滅入ってしまう。この空間が彼にとっては癒しなんだろうけど。
 ――昨日、散乱した本を勝手に触って片付けてたら、怒られて部屋から追い出されてしまったのを思い出すうちに、目的の場所へと辿り着く。開きっぱなしの扉から、また顔だけを覗かせる。奥まった場所にある、小さなランプのオレンジの灯りが、部屋の内情を教えてくれた。
 だだっ広い部屋に、ここもまた様々な本が辺りに散乱し、その本達に囲まれるようにしてキングサイズのベッドが1つ。やたら広いベットその中央には――ポツンと出来た一つの膨らみ。音をなるべく立てないよう、大理石で出来た床へ踵を静かに下ろしゆっくりと歩み寄り始める。足を踏み出すも、本達に行く道を妨害され、歩く――というより、大股、小股とつま先で重なった本の隙間を見つけながら、先へと進む。

(やっぱり、明日から掃除を始めること決定)

 何とかベッドサイドまで辿り着き、上掛けで顔は隠しているけれど、灯りの色に染められた柔らかなそうな髪がこっそり出ているのを目にする。