君がいるから



 うまく彼等の言う状況を理解しきれていない私の傍で、もう1人の騎士が続けて言う。

「だっ第一発見者の第3番団員二名が悲鳴を聞き……駆けつけた場所は長様方の魔導の部屋からだったそうで。普段自分達が立ち入れない場所だったのですが、長様方の安否が心配になり、奥へ進んだ処、辺り一面が……血の海だったそうです」

「…………」

「ただ……息をひきとる間際に1人の老様が――銀の瞳という言葉を残したと」

 騎士の言葉に、瞬間、私達3人の瞳が大きく見開いていく。

「銀の瞳……だと」

 ジンが声を震わせながら言葉にする。

 ――銀の瞳――

 あの氷のように冷たい眼差しと瞳が頭を過っていく。その瞬間、唇が微かに震え出してしまい、まだあの指先の感触が残る顎に指先で触れる。

 ――俺の名前は、ハウィー。覚えておいて――

「あの人――」

「王と……団長、副団長に一刻も早く知らせねばと、我々はここに」

 そう伝え終えた騎士達は、同時にガクッと肩を落とし嘆く。時折、声を押し殺した声が漏れ聞こえ、肩が少し震えている彼等はきっと――。

「ア……ディル……城へ、急いでくれ……」

 ジンは擦れる声でアディルさんに頼むも、ガクッと頭がアディルさんの肩に落ちてしまう。それでもなお、急いでくれ――そう、何度も呟く。すると、アディルさんはゆっくりと腰を落とし、地に膝を付いてしまう。そして、ジンの体をそっと自分の背中から下ろし、瓦礫の山にジンの体を寄りかからせた。

「アディルさん?」

「あきな。王を頼む」

「頼むって、アディルさん」

「王はこの体じゃ、とてもじゃないけど無理だ。俺とアッシュで老様方の元へ行ってくる」

 アディルさんは着ていた青の隊服の上着を脱ぎ、それをジンの頭の後へ。ジンに一度軽く頭を下げたのちに立ち上がり、私のところへ歩み寄って来る。私の目前まで来て、スッと長い腕が伸びてきたかと思えば、気づけば逞しい胸に頬を預けていて、シャツを通して伝わってくる温もりに目を見開く。視界が少し濡れた金の髪で微かに染まる。

「あ、の」

「…………」

「アディ……ル、さん?」