君がいるから



   * * *



「お~い、入るぜ~」

 ある一室の扉を開き陽気な声で入ってきたのは――頬を赤く染めた酒酔いの男。その手には酒瓶が1つ――。

「明日になんねーと、修理出来ないらしいぜ~」

 部屋の奥へと進み、出窓になっている台に背をつけ寄りかかり手にしてる酒瓶を置く。そして、ふと視線を落とす。

「それとよ、シャルネイの監視塔が見えてるぜ。この場所、既に知られてる可能性大だな――って。お~い、人の話聞いてるかぁ~?」

 そう言葉を投げ掛けた先には――男の傍らで床に腰を下ろし、両膝を立てた上に両肘を乗せ、顔を伏せている赤髪の姿。

「まっ夜明けになんなきゃ、おりゃ達も向こうも何も出来やしないか~」

「……あいつ」

 顔を伏せたまま、呟き言う声が酒瓶の蓋を開け直に口をつけ喉に酒を流し込む男の耳に届く。

「んぁ?」

「……あいつ」

「あいつって……嬢ちゃんのことか? あんな嬢ちゃんにキレるなんてお前らしくねーんじゃねーか? ん?」

 無気力に垂れ落としていた赤髪――ギルの手が、力を込められた拳へと変わる。その様子を見て、酒酔いの男は酒で喉を潤しながら、ギルの姿をただ見下ろすだけ。

 カツンッ カツンッ

「ん?」

 出窓のガラスから聞こえる音に、酒酔いの男は外へと目を向け呟く――。

「雨……か」






   * * *




「降り出してきたか」

 灯りがポツポツと灯る通路に立つジンは窓の外を見遣り、閉められた硝子窓の外から聞こえてくる雨音に呟く。

「あぁ、そのようですね」

 ジンの言葉に、背後から付いてきていた1人の騎士が応える。進むべき方向とは違い、窓側へとそっと歩み寄っていくジンを騎士は不思議そうに目でその姿を追う。

「王? どうかされましたか?」

 騎士の言葉と同時に、ジンの手によって音を立て窓が開かれる。そして、窓の外――バルコニーへと歩み出て行く。

「王!? そのようなところに出てはっ」

 ジンは騎士が呼び止めるのも耳を貸さず、屋根のない場所――雨が降り頻る中へ。

「……嫌な雨だ」

 闇夜が広がる空を仰ぎ見つめ――呟いた。