君がいるから



 小さな体を包み込みたくなって、シャンロの傍に歩み寄って膝を折り床に着いた時、シャンロは伏せていた顔を上げて、真っ直ぐ一点を見つめる眼差しと出合う。

「あったかいご飯もくれた。俺、助けてくれたギル兄貴に一生ついていくって決めたんだ」

 先ほどの幼い印象はなく、強い意思を秘めた大きな瞳。

「盗賊がどんな風に思われているのかも俺、理解してるつもりだ。この船に乗ってる兄貴たち全員……色んなモノ抱えて盗賊として闘ってる」

「シャンロ」

「お姉ちゃん」

「ん?」

 膝立ちしている私と丁度同じ目線――背筋を伸ばして眉を八の字で見つめてくる。

「ギル兄貴が……その、お姉ちゃんにしたこと……許してあげて欲しいんだ! 本当にごめんなさい!!」

「ちょっシャンロ!?」

 力いっぱいに頭を勢いよく下げた姿に、驚き慌ててシャンロの顔を覗き込む。

「顔上げて! シャンロが謝ることないのにっ」

「兄貴、素直じゃないし短気な所があって、急にあんなことする時あるけど――でも!!」

 シャンロはそのまま頭を下げたまま、言葉を続ける。

「本当は優しいところもあるんだ! 俺を拾ってくれたり、食べ物に困ってる子供がいたら、自分の分をあげたりとか……。傷を負った人を見たら薬を分けてあげたりとか、仲間思いな所もあってっ」

「…………」

「だからっだから!! 俺が代わりにいっぱい、いっぱい謝る! だから!!」

 一生懸命で熱いシャンロの懇願に、胸が締め付けられ――手を伸ばしクシャクシャッと猫っ毛の髪を数回撫でる。もう、それ以上は言わなくてもいいと――。

「……お姉ちゃん」

「もう分かった、分かったから。シャンロに免じてギル兄貴のこと許します」

「ほん……と?」

 言葉で答える代わりに、満面の笑みを浮べて頷いて見せる。すると、シャンロもみるみる笑顔へと変わって2人で笑い合う。

「話は終わった――かな?」

 私たち以外の声がして視線を動かすと、食堂へと繋がる通路からセンター分けの前髪と肩まである長さの白髪が、灯りでキラキラと輝く――そして一際目を引く金の瞳の持ち主が。