君がいるから



  * * *


 ジャーーッ カチャカチャカチャ

「シャンロ、このお皿拭いてから戸棚にお願い」

「はーい」

 キッチンに私とシャンロの2人。大量のお皿を1枚1枚洗う私と、洗い終わったお皿を拭き戸棚に戻すのがシャンロ。
 こんな大量にお皿洗うことなんて滅多にないことだから、これは腰に地味にくる。今まで数回だけ、父さんが会社の人達を自宅に招いたことがあったけれど、ここまでじゃなかった。
 濡れた手のまま拳を作って、腰をトントントンっと数回叩く。まだ10代なのに何とも情けない。運動不足もたたってるのかも。

「お姉ちゃん、それでもう終わり?」

「あっうん。もう終わりだよ」

 蛇口をひねり水を止め、手をタオルで拭う。背後で一生懸命動き回り働くシャンロへと、体を向き直る。

「ねぇ? シャンロ」

「ん? なにー?」

 お皿を戸棚へ丁寧に並べ置いたシャンロは、可愛らしい顔を私に向ける。

「この船って……その、とっ盗賊の船なんだよね?」

「へ? そうだけど。お姉ちゃん知ってて、この船に乗ってるんじゃないの?」

「あっいや……」

 実際には無理やり連れて来られたのが正解で――この船に乗せられている理由さえも分からないのが現状。そんなこと、シャンロに言っていいものなのか。

「俺、いつかギル兄貴たちみたいな強い男になるのが夢なんだ」

「シャンロ……それは」

 あの人達を夢にするって。そもそもシャンロは、盗賊というものの意味を理解しているんだろうか。それに、私がシャルネイから連れて来られたことは、あの人達は伝えてはいないんだし。

「ねぇ、シャンロ。1つ聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

「いいよっ。何でも聞いてよ」

「えっと、シャンロはどうしてこの船に乗ってるの? あの人達の中にシャンロのお父さんがいるとか?」

「え……俺は」

 急に顔を曇らせ口を噤んでしまったシャンロの様子に、やっぱり聞いてはまずかったのかと慌てて話しを変えようと思考を巡らせる。

「いっ言いたくないことだったらいいよ!! ごめんね。それより――」

「俺……家族いないんだ」

「……シャンロ」

「ギル兄貴が俺を拾ってくれて……この船に乗せてくれたんだ」

 顔を俯かせ、小さな拳を震わせながら、シャンロはか細くそう口にした――。