君がいるから



「兄貴とお姉ちゃん……何してんの?」

 大きなまん丸な瞳を瞬きさせては首を傾げるシャンロは、料理を盛ったお皿が乗るトレー代わりの木板を持って立ちつくす。

「なっ何にもっないよ?」

「それはそうと、ギル兄貴、どうしたんすか?」

 シャンロの目に映る光景は――。

「ってー……」

 私は壁際で両腕を目一杯に伸ばした状態、それから――床に寝転び体を丸めて顔を歪ませて、後頭部を抑えているギルガータの姿がある。

「こっ転んだんじゃない!? シャンロっ手伝うよ!」

 ギルガータを気に留めることもなく、シャンロの元に駆け寄って木板を受け取りテーブルへと運ぶ。私の後から、シャンロがちょこちょこと追いかけてきて、私の背後からひょっこり顔を覗かせる。

「ありがとう、お姉ちゃん」

「どっどう致しまして。それより、シャンロのご飯も冷めちゃったね。温めなおしてこようか?」

「ううん、いい。俺、熱いの苦手だから」

「だぁーもう!! いってーなっ」

 私とシャンロとの会話に割って入ってきた大声に、2人一緒に見遣った先に床から体を起こし立ち上がったギルガータがいる。後頭部をガシガシッと乱暴に掻き、痛さを紛らわしてるような仕草。

「てめーなっ!! いきなり押し倒すんじゃねーよ!!」

「おっ押し倒すって、変な言い方しないで!」

「んだと、この野郎」

「だっだいたい、全部あなたが悪いっ」

「あぁ!? んだとこらっ!!」

 勢いよく体を身を乗り出すように近づかれて、体が警戒し瞼をきつく閉じる。

「……ちっ」

 舌打ちが聞こえてそっと瞼を上げ開くと、ギルガータは何も言わずにテーブルに並べられた料理の前へと腰を下ろした。その姿をじっと凝視していたら。

「んだよっ。見てんじゃねーぞ」

「…………」

 さっきのあの表情は幻なのか――この人の行動の意味が心の底から理解が出来ない。

「あーっと」

「…………」

「……さっき言ったことは守る」

「へ?」

「だから! もう怖がらせるようなことはしねーよ」

 ぶっきら棒に言い放って顔を逸らし、食事を口に運び始めてしまう。勢いよく口に料理を運ぶ姿は――まるで小さな子供みたい。

「一緒に食べよう」

 スカートを引っ張られ下方へ視線を移すと、シャンロに座る事を促され元の席に戻って中断してしまった食事をシャンロと共に再開した。