君がいるから



 そっと腕に触れてきた思いのほか冷たい彼の掌に、驚き肩が跳ねる。

「あっ冷たいよね、ごめん。俺いつもこんなんだからさ、ちょっとの間我慢してね」

「いえ。大丈夫です。何だか、こちらこそ面倒をおかけしてすみません」

 頭を軽く下げ答えると、彼は柔らかく微笑む。その笑みは、私に安心感をくれる程、優しさを感じる。

「あ~ぁ。女の子の大事な肌にこんな痕つけるなんて……ギル最低」

「あ……あの」

「冷やしておけば、赤みはなくなるよ。今、冷やすモノ持ってくるから、待ってて。ネゼクはあいつ等止めてよ、煩くてしょうがない」

「早く飯にありつきたいしなぁ。あぁ、めんどくせー」

「え!? いえっあの!」

 私が呼び止めるも、彼はさっさとキッチンへと消えてしまうし、横にいた男の人はあの2人の元へと足を向け離れて行ってしまう。

(どうしよう……逃げ出すなら今? でも、何処から? それにこのまま、逃げ切れる?)

 頭の中で1人考え込んでいると、スカートを下方へ引っ張られる感覚に我に返りその方へ視線を落とす。

「あれ? シャンロ?」

 シャンロの小さな手が私のスカートをギュッと握り締め、真ん丸の瞳が私を心配そうに眉を下げ見上げていた。

「お姉ちゃん……腕、痛む?」

 今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべるシャンロ。

「……シャンロー」

「うわっ! おっおっお姉ちゃん!?」

 可愛すぎて、思わず小さな体のシャンロを抱きしめた。でも、シャンロは突然の事で、私の腕の中で暴れ離れようとするけれど、私はシャンロの肩に顔を埋めて口を開く。

「ごめん、シャンロ。ちょっとだけ。もうちょっとだけ、こうさせて……」

「……お姉ちゃん?」

「……ごめんね」

 シャンロの肩に額を預けていたら、頭をやんわりと撫でられる感覚に、思わず目頭が熱くなって来る。泣かないって決めたのに。
 シャンロの体温とゆっくり頭を撫でてくれる手つきに、瞼がどんどん熱くなって鼻の奥がつんとした時――。

「お前、そんな年が離れたのが好みなのかよ」

 突如、降ってきた声にハッと瞳を開いてシャンロから体を離し、恐る恐る顔を上げた――。