君がいるから



「さっ料理を運ぼうっ。皆でごはんを食べる場所は何処?」

「うん! えっとね、こっちに食堂があるんだ」

 シャンロは両手に盛り付けられたお皿を持ち、ついて来てっとコンロの向かい側にある食器棚に向かい、それを横切って行く。私も両手にお皿を持って小さな背中を追って行き、食器棚の横にある木板でつくられた扉から顔を出し覗く。少し暗い通路があり、その先に灯りが見えてそっと通路に足を踏み入れ進む――。
 ギシギシと床板が鳴って辿り着いた先には、大きな楕円状のダイニングテーブルが2つと背もたれがない丸椅子がその周りに乱雑にいくつも置かれていた。部屋の広さに対してテーブルが幅を取っている感じで、ここに椅子の数分だけ人が入ったらと想像すると――相当窮屈だなと感じてしまう。

「ふぇ~おっきなテーブル」

「お姉ちゃん、適当に置いちゃって」

「え、あ、うん。分かった」

 シャンロはテーブルにお皿を置いて、軽快にまたキッチンへと戻っていく。私も手にしているお皿を置き、シャンロに続いてキッチンへと戻る――その行為を数回繰り返した。









「取り皿、スプーンとフォークっと。よしっ準備完了~!」

 テーブルに並べ終えた大皿やセッティングした食器の数々に、腰に手を当てて一息つく。

「お姉ちゃん、すごいや! やっぱり女の人って料理上手なんだね」

「私の料理なんて大した事ないよ。調味料だってこの世界のは初めて使ったから味に自信ないし」

「さっき味見したら、ホント美味しかったよ!」

 にっこり微笑むシャンロの表情に、私も自然と同じく頬が緩む。膝と腰を曲げて、シャンロの目線に合わせて彼の頭に手を乗せる。

「ありがとっ。そう言ってくれると、とっても嬉しい」

 小さくへへっと声を漏らして頬を赤らめ笑う表情に、一瞬だけ小さい頃のコウキの姿が重なった。コウキもこんな感じだった。可愛い頃もあったのに、今は何とも可愛げがない。
 シャンロが首を傾げて不思議そうに私を見つめてくる視線に、シャンロの頭を一撫でした後で背筋を伸ばし目線を戻す。その時――。

「シャンロー! 飯出来たかぁ!?」

「腹減ったぜぇ。でもなぁ、シャンロの飯なんだよなぁ」

「たまには、うま~い飯を腹いっぱい食いたいもんだぜ」

「お~い! 誰か酒持ってこい!!」

 口々に言葉を交わしながら、食堂の入口から何人もの男達が続々と入ってきた――。