君がいるから



 幾度も他愛もない質問を投げ掛けるも、ただレイは一点――私を見つめ続けている状態。強い碧の眼差しに、段々と言葉を失っていく。

(どうしてこんなに見られてるんだろう――私。1人で早口に喋りすぎて、引いちゃってるとか? そっそもそも、この方は何をしに来たんだろう)

 太股に両手を置き、変に肩に力が入って姿勢を正してしまっている私。色々考えてる間にも、視線が突き刺さってすごく痛い。このままだと埒があかず、意を決してもう一度口を開く。

「私の顔に何か付いてますか!?」

 相手の眼力に負けない為に、私もレイを強く見つめる。すると、レイの口元がおもむろに開かれるのが映った。

「別に」

(ってそれだけ!?)

 突っ込みたくなるくらいに、その後は口を閉じてしまったレイを見ていると、疑問が減っていかない。私から押していかなければ、状況は平行線のままだ。

「あの、聞きますけど……昼間、私がしたことの仕返しでしてるんですか?」

 そう問うと、やっとレイの視線が外された。

「別に」

「別にって。もう1つ聞きますけど、私に用があって来てくれたんじゃないんですか?」

 身を乗り出して問いかけたのがいけなかったのか、レイは目を伏せてしまう。

(この人、よく分からない……理解不能)

 もう、とりあえずそっとしておこうと決める。

「歌」

「え?」

「あんた、歌が聞こえたって言ったよな」

「あの綺麗な。うん、レイの部屋から少し離れたところにいたんですけどね」

 昼間の事を思い出し、頷いて見せ、目を開いたレイが何かを言おうとした時だった。

 コンコン

 扉を叩く音が再び聞こえ、レイは動きを止めて私は短く返事をし扉の方へと駆け寄った。ガチャッと扉を開けると、そこにはまたもや予想だにしていなかった人物が。

「ジン!?」

 目前に立つ人物の名を、驚きの声で言い放つ。

「驚くほどのことか?」

「だって。まさか、ジンまで来るとは思ってもなくて」

「まで? 誰かいるのか?」

「えっと、レイが来てるんだ」

 チラッと奥へと視線を向けて私がレイの存在を伝えると、ジンは目を見開く。手で中へと誘うと、ジンはレイの座るソファーへと足を進めていき、私も扉を閉めてジンの分の飲み物を用意し、2人の元へと急ぎ戻る。