君がいるから



 そっと辺りを移し見ると、窓際の部分だけが明るく照らされている。

「……え!? もう夜!!」

 慌ててベットから飛び降り、薄暗い部屋に灯りを点す。窓際に寄り、ひんやり冷たい硝子戸に手を当てて力なく首を前に垂らした後、窓外を見遣る。

「うわぁ、もう陽が落ちてる」

 遠くの方で陽が沈んだばかりなのか、赤オレンジの色の明かりが微かに見える。そこから、濃紺へとグラデーションで空を飾っていた。

「この月にも、少し慣れてきたかも」

 夜の帳が訪れる度に、一層輝き存在感を現す紅い月――。

「喉カラカラ……お水でも飲もう」

 んんっと咳払いをしながら、渇き切った喉を潤そうと飲み物が常備されているテーブルへと足を向けた。




 コポコポッ

 ガラスポットになみなみと入った水を、グラスに注いで手に取り勢いよく喉に流し込んだ。

「ぷはぁ。おいしいっ」

 水を一気に飲み干し、少し口端に漏れた水滴を指で拭う。喉はまだ潤いを欲していて、もう一杯と水を注いだそんな時。

 コンコンッ コンコンッ

 っと続けざまに扉を叩かれ鳴る音に、手を止めて足早に歩み寄り返事をする。

「はい。今、開けます」

 扉はギィーっと音を立てて開くと、そこに立っていた人物に目を見張った。

「昼間の!! レ……イさん?」

「さん、いらないって言ったろ。もう忘れたのか」

「って、え? ちょっ」

 そのまま横をすり抜けられ、勝手に押し入ってきたレイ――の服をすかさず掴み止めるも、彼はチラッと視線だけ送り、手を軽く払いのけた。ズンズン先に足を進め、ソファーがある場所まで行ってしまう。

(仕方ない。私も昼間、彼の部屋に勝手に入っちゃったし)

 そう思い返し、扉を閉めて私も彼の後を追う。奥へと進んだレイは部屋を見て回り始めた。

「あのー……そんなに見られると恥ずかしいんですけど」

 まぁ、自分所有の部屋ではないけれど。こうして、まじまじ見て回られると、さすがに恥かしさが込み上げてしまう。特に私物は通学用鞄のみではあるけれど。
 表情を変えることもなく無言のまま――しばらくして気が済んだのか、ソファーへと乱暴にレイは腰を下ろした。