「ここが我国シャルネイ。シャルネイが位置する大陸を"リト"と言うんだ」

「リ……ト」

 アディルさんがゆっくり教えてくれた内容は。
 この世界は"ガディス"という名であり、私達が住む青い星を地球と呼ぶのと同じよう。そして、この世界には大きく分けて4つの大陸が存在し、私が見た感じだと見た目は地球の世界地図にどこか似ている。その中でも1番大きな面積で描かれているのは、今私がいる"リト"という光を司る大陸。
 この大陸には"シャルネイ"が大半を占め、もう1つウィズアリー国という国が存在しているそう。あと3つの大陸には、大小の様々な国々があるらしい。
 それぞれ3つの大陸にも、リャフォレ――緑を司る大陸、アミュ――水を司る大陸、フーエン――風を司る大陸、という名がある。
 地図にはそれぞれ国の名前らしきものが書かれているようだけれど、私にはどんなに頑張っても読むことは出来ない。こうして眺めていると、1番大きなこの国の頂点に立つ王様は改めて凄いと思う。
 大陸を囲んでいるのは海のようで、大陸の中には川や湖までも存在してる。地球となんら変わらない環境。でも、ここは地球ではない――ということを再認識させられる。

「今の説明の他に聞きたいことある?」

 大まかに説明を話し終えたアディルさんが私に問う。

「あ……そうですね」

(聞きたいこと……)

「1つ気になってることがあるんですけど、王様が盗賊に狙われてるっていうのは……?」

 脳裏に浮かんだのは、あの森での王様とのやりとりだった。私が真っ直ぐに見つめながら聞くと、アディルさんが目を見開く。

「王に聞いたの?」

「はい。私を連れて行った人達の前で"王様"と呼んでしまって……。それで"盗賊に知られた"って」

 背凭れに体を預けたアディルさんは、ふぅっと長めの息を吐く。さっきまでの優しい笑みの表情とは違い、どこか寂しげで辛そうな表情へと変わる。

「あきな」

「はい」

 すごく静か。この部屋の何処かにある、時を刻むような単調な音だけが微かに聞こえてくる。そして、この静寂の中で、アディルさんは薄く唇を開く。

「この世界には……傷があるんだ」

「傷……」

 紅い瞳が天井を仰ぎ、アディルさんは再びゆっくりと話始める。時を遡る事、数十年前の出来事を――。