どうして、俺はいつも梓紗にこんな表情しかさせないんだろう。



「なぁ………梓紗。」



名前を呼べば、梓紗は少しだけ身体を揺らした。


その瞳には、悲しみと少しの戸惑いが分かる。


「梓紗のことを笑顔にさせたいのに出来ない時はどうすればいいと思う??」


「…………えっ………??」


「いつも、梓紗だけを見てた。どんなに女が近寄ってきても俺は梓紗しか『女』だとは思えなかった。」


「あたしは…………。」


「でも、俺は梓紗を傷付けることしか出来なかった。」


その瞬間、梓紗は恐る恐る俺に触れた。


「あの………ね??」


「うん。」


「あたしはね??一度も夏起くんを嫌いだとは思ったこと無いよ??」


「なん………で??」


「だった、あたしのストラップを直してくれたじゃん。」


その時の梓紗は、悲しい顔なんてしてなくて…………。


「笑って…………くれた………。」