その時だった。
後ろから水を激しくかき分ける音が聞こえてきた。
「梓紗!!!!」
あたしが好きになった甘い声が聞こえてきた。
あれっ?? あたし、本当に壊れちゃったみたい。
後ろから夏起くんの声が聞こえてくる。
そんなことある訳が無いのに。
あってはいけないはずなのに。
なのに、どうしてだろう。
あたしは後ろを振り返ってしまったんだ。
望んでしまったんだ。
夏起くんが来てくれることを。
後ろには真冬の冷たい海の水をかき分けてくる夏起くんが居た。
「何してるの??」
あたしは、夏起くんが5m先に居る所で声をかけた。
そこで止まってほしかった。
じゃないとあたしは夏起くんに抱きついて泣いてしまう。
頼ってはいけない人に壊れた心を治してもらおうとしてる。
夏起くんは寒さに身体を震わせていた。
あぁ、あたしは何も感じないのに。
なのに、どうして思いだし始めてるんだろう。
夏起くんの温もりを。

