どうしたの?って、なにかあったの?ってそう聞かれても、なにも答えられなくて、答える時間さえ惜しくて、とにかくはやく連れていかなくちゃって。 その場所に着いたとき、いつもあんなに落ち着いているにーちゃんがすごく狼狽えていた。 『連れてきてくれてありがとう、もう大丈夫よ』 強く握っていた手を離して、俺の頭を軽く撫でた速水先生は、同じようににーちゃんの頭も撫でた。 チラリとふたりの間から見えたアイツは小さくて、いつも白い顔はもっと白くて、怖かった。