「だーかーらー、家族になるのよ♪」


そう言ってニコニコと笑うかーちゃん。


意味がわからなかった。





そんなとき、とーちゃんが口を開いた。



「梨香子、玲菜に部屋を案内してあげてくれないか」



「…わかったわ。行きましょう、玲菜」


その言葉に空気を読んでうなづいたそいつ。





「玲菜は、虐待っていって、親から暴力とかを受けていたんだ」



「ぎゃくたい…」


にーちゃんがつぶやくように繰り返した。



「うん、それで、児童相談所に預けられていたところを俺たちが引き取ったんだ」



「…どうして?」


「拓真…」


受け止められなかった。
いままで寂しくても我慢できていたのは、ちゃんと俺の話を聞いてくれて、ちゃんとかまってくれていてから。

それがなくなってしまうのはこわかった。


俺はそのままリビングを飛び出して、部屋に戻った。



正直、どうでも良かった。

そいつが親から虐待を受けていようがいまいが、俺には関係ないとさえ思った。


どうして、引き取らなくてはいけなかったか、
どうして、そいつのせいで俺がこんな思いをしなければいけないのか、


どうして、どうして…


その言葉だけが俺の頭の中に回っていて、玲菜がどれだけ苦しんできたか、どれだけ我慢してきたかなんて考えなかった。


そんな余裕なかったんだ。



もしここで、きちんと受け入れられていたら、あんなこと起きなかったのかもしれない。