これが今の自分、既婚の自分の姿かと、惨めに思いながらも、「お疲れ様でした」の挨拶をする。

「あ、誰か送って行ってあげてー。駅まで暗いから」

 課長の優しい声が飛んだ。

「じゃあ、僕行きます……」

 本日の会で最年少の彼が一番に立ち上がった。

 ドキリとしたが、それ以外に選択肢はないので、下心はないに等しい。

 私たちは揃って靴を履き、店の表へ出た。

「大変そうでしたね、オジサマに囲まれて」 

 吉永は続けて、

「本当は一番年下の僕がするべきだと思ってました、すみません」

 思いもよらなかった言葉に、

「えっ、そんなことないよ。あれは女の人がした方がいいから」

と、当然のことを言った。

 辺りは既に暗く、ちょうど人も歩いていないが、駅はすぐそこだ。もう入口が見えている。

 平常に見せかけて、実は心臓が高鳴り、足が地につかないほど緊張している。しかし、それは彼のせいではなく、酔いのせいかもしれない。

「今日は課長が盛り上がってるんで、なかなか帰れそうにないですよ、僕は」

「帰りたいの?」

 彼は笑いながら頷いた。

 彼女が待っているのだろうか。

 そう考えると、自然に足が止まった。