ふぃ〜、と息を吐きながらソファーに深々と座る出灰(いずりは)さん。
彼の名前は出灰 水都さん。黒羽の数少ない知り合いの一人であり、黒羽をいつも一度は怒らせる人物。
そして私の苦手人物No.1。
「ちょっと、隣座りなよ。話をするのにそんな遠かったら楽しくないだろう」
いや、あんたが来た時点で楽しくなんかないよ。楽しいわけあるかよ。
とは口に出さず、ノロノロとソファーに座った。
「ふふん、君、前来た時とあんまり変わらないね。いいね、実にいい。
変わらないというのは逆に美しいものだ。で、どうかな?一口くらい駄目だろうか」
「いいと答える人は少ないと思います」
「だろうね。良識的、常識的。だがその頑なさがまたそそるんだ。で、駄目かな?」
「駄目ですね。第一、そんなことしたら黒羽が怒りますよ」
「知ってるよ。それがまたいいんじゃないか」
駄目だ。変態には何を言っても通じない。


