シュウは、プリシラに願った。
「お願いします。どうか、エレーナさんの翼を治してあげて下さい」
強い光が発生し、エレーナにふりそそぐ。
だが、エレーナの傷はなかなか治らない。
「おかしい、なぜ願いがすぐに叶わない?」
ジェシーは首をかしげた。
確かにエレーナの傷は深かった。
しかし、天使は元々高い能力を持つ。この程度の願いを叶えるのはたやすいはずだ。
「通常、こんなに手こずることはありえない」
ジェシーは、この時、プリシラの天使の能力が著しく低下していことに気づいた。
「そんな馬鹿な! いったいどうなっているんだ?」 
なぜプリシラの力が低下したのか、ジェシーには原因が分からない。
その時、シュウに異変が生じた。
ジェシーは、シュウの姿が一瞬薄く透けるのを見た。ほんの一瞬だが。
「まずい、このままでは」
プリシラの力が足りず、願いが叶うまであまりにも時間がかかる。
そうとは知らないシュウは、エレーナを治したい一心で強く願いすぎ、自分でも気づかないうちに霊力を消耗してしまうのだ。
このままだと、願いが叶う前に、シュウは霊力を使い果たし、消滅してしまう。早く願いを叶えるには、より大きな力が必要だ。
「おい! 私も助太刀するぞ」
ジェシーはシュウと仮契約した。
ジェシー・クリスタルは中間クラスの天使。一般クラスのプリシラと違い、より大きな力が使える。
強力なジェシーの力を借りてから、エレーナの翼はみるみるうちに治っていった。
やがて、光が消え、エレーナが静かに目を覚ました。
「シュウ君、プリシラさん、ジェシーさんまで!」
みんなエレーナの顔を心配そうにのぞきこんでいる。
「良かった。エレーナさんが治って」
シュウは一安心。
「私は、今まで……。そうだ、市川さんは?」
エレーナは周囲を見渡す。
「市川さんなら無事ですよ」
シュウの近くに居たまなみの姿を見つけたエレーナは安堵する。
「お前、人の事より、自分の体を心配しろよ」
ジェシーは呆れる。
「翼、治っている」
エレーナは、嬉しそうに自分の翼を確認する。
「こいつ、エレーナの翼が斬られたのは自分のせいだって責任感じて。
だからエレーナを治したいって強く願ったんだ」
エレーナは、ジェシーから自分が気絶している間に起きていた事を聞かされた。
「そうだったんですか」
エレーナはその時、シュウの姿が薄く、一瞬透き通って見えた。