倉庫の中から声がした。
「市川さん、どうしてこんな所に」
「急に出られなくなって」
シュウは、倉庫の扉に近づいて触れようとした。
「あっ」
そのとたんにビリビリと結界の強い反発に跳ね返された。
「これは一体?」
「来たわね。待ってたわよ」
声のする方を振り向くと、柚原なつみとその手下達が立っていた。
そして、なつみの右手には護身刀が。
「体育倉庫に結界を張ったの。これで市川さんは出られないわ」
よく見ると倉庫一面に結界の札が貼ってある。
「なつみさん、どうしてこんな事をするんですか?」
「幽霊の市川さんを捕えれば、あいつと仲の良いあんたは必ず助けに来ると思った。全て、あんたを倒すためよ」
そう言うとリーダーは刀を抜いた。
「覚悟しなさい!」
なつみは、刀を構えるとシュウに向かって行った。
そして斬りかかる。シュウはそれをするりとかわす。
「私はあんたが嫌い。あんたが来てからこの学校も、私の生活もめちゃくちゃ。
市川さんはあんたが連れて来たんでしょ? この学校を幽霊学校にする気? 
私は絶対あんたを許さない。悪霊は消えなさい!」
なつみは、何度もシュウに斬りかかる。だが、足取りは重く、刀もふらついている。
剣術慣れした真紀ならまだしも、普段、刀など持った事がないなつみが、ずしりと重い真剣を十分に振り回せる訳がない。
「貴方は誤解しています。僕も、市川さんも悪霊じゃありません。
なつみさん、もう、こんな事やめましょうよ」
シュウがなだめるものの、なつみは、全く耳を貸さない。
仕方がなく、シュウは一度その場をから逃げることにし、ふわりと飛び上がった。
「あっ、逃げるか! 卑怯者!」
なつみは、怒鳴る。
「市川さん、必ず助けに来ますから、そこで待っていて下さい!」
シュウは、そう叫ぶと校舎を高く飛び越え、なつみの眼中から姿を消した。
 
 「何としても市川さんを助け出さなきゃ。早くエレーナさん達に知らせないと」
シュウは静かに屋上に降り立つと、校舎内に入って行った。
「ご主人様!」
シュウは、校舎内でまなみを探していた、プリシラと再会。
「大変です。市川さんがなつみさん達に捕えられて、体育倉庫に封じ込められています。
倉庫には、幽霊を封じる結界が張られていて、僕には助け出す事が出来ませんでした。
僕は体育倉庫の近くにいますから、早くエレーナさんを呼んできて下さい」