羽毛田の夢は、泡となって消えた。


事務所に戻る道中も、ずっと下を向いて黙ったままだ。


その落胆ぶりといったら、見ている方が落ち込んでしまいそうな程である。


「ボス……元気出して下さいよ♪」


「ボスは、スキンヘッドの方が似合ってますって♪」


「その方が、渋くて素敵よ♪」


「そうそう♪シャンプーだって楽だし♪」


「お茶でも飲んで、気を取り直して下さいにゃ♪」


皆で羽毛田を慰めようとするが、羽毛田は返事もせずに俯いたまま歩いている。


「さすがに今回は、相当ショックだったみたいね……」


その、沈んだ雰囲気とは対照的に、前の方からは明るくお喋りをしながら、三人のOLらしき若い女性達が歩いて来ていた。


「…それで、朋子は誰が良いの?」


「アタシはやっぱり“ブラピ”かな~♪早紀は?」


「あたしは断然“ジョニー・デップ”よ♪」



会話の内容はどうやら、三人で好みの映画俳優の言い合いをしているらしい。
どこででもよく聞くような、たわいない話題だ。



ところが……




「アナタ達、まだまだね……」


三人の真ん中を歩いていた、先輩らしい綺麗な女性が諭すような口ぶりで言った。