エシャルから注意を促す知らせがないってことは、魔法の使用が許可されているってこと?

もしそうなら、魔法を使わないといけない状況下にあるのよね?


琴葉ちゃんが人間界に来ているから、それでルールが緩くなっているのかもしれない。

人間界に魔法が存在してしまったら、もはやエシャルとの境目がわからなくなりそう。



「考えすぎるのは、あなたの悪い癖です」

パタンと閉じた本を、座っていたベンチに置いて立ち上がる。


誠は、隣に並ぶと遠くを見ているようだった。


「空っぽの頭で考えたって、答えは出てこないでしょう。
貴重な時間の無駄ですよ」


空に、羽ばたく鳥が見えた。

あの鳥は、どこに向かってるんだろう。

幸せを探しに、旅をしているのかも。

少し前のあたしみたいに。



「ねぇ誠、あたし決めたわ」

右手でブレスレットにそっと触れる。


太陽と月と、それから赤い石。

揺れる小さな装飾品。



「妖精を全員見つけて、人間界のバランスを元に戻す、そうしたらね───」

「楼那さん、みーけっ」