「え?」

「それよ」


そんなこともわからないの?と、見下したように指を差す。


先には、あたしの左手首に吊されたブレスレット。

未だに、真っ赤な光に包まれたまま。


左手を宙へ掲げると、妖精がキラキラとした赤い光の粒を放ち始める。

次第に姿が半透明になった。



あたしの洋服の裾を、佐久間さんがぎゅっと握る。

神秘的な雰囲気が、その場の空気を支配する。



「ローナ姫、これからあんたには困難が降る」

姿が完全に消えてしまう直前、左手のブレスレットに感じた温もり。

どこからなのか上手く言えないけれど、妖精の声は確かに耳に届いて。


「でもきっと、みんなが助けてくれるわ」

「どういうこと……?」



質問の答えは返ってくることなく、あっという間に妖精の姿はなくなった。

代わりに、黄金色に戻ったブレスレットに、ひとつ装飾品が付いていることに気がついた。


光を反射して輝く、真っ赤な石。

まるで宝石みたい。


きっとこれが、妖精の力を封じ込めた魔力結晶なんだわ。