鼓動の高鳴りが、自分自身でよくわかる。
今、あたし、とってもドキドキしてる。
ドキドキを自覚したら、余計に胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなった。
「お前に任せたら、食えるもんが食えなくなるからな」
「へ……?」
さっきの優しい笑みから一変。
何ですか、その余裕たっぷりな裏のある笑顔は。
ひょっとして、バカにされてる?
「愛琉さん、ヒドいわ」
彼の笑顔に一度ドキドキした自分が恥ずかしい。
むっとして、相手を睨む。
さっきの言葉は、すべて取り消すんだから。
「ほら、妙な言い合いしてないで行ってきな」
イライラを消すように、今度は里音がトンと肩に手を置く。
佐久間さんが状況を把握できないようで、首を傾げてこちらを見ている。
あたしは一度愛琉さんと視線を交えてから、そっぽを向いた。
ずっと掴まれていた腕を解いて、自ら握った佐久間さんの手。
「行きましょう」
もう、愛琉さんなんか知らない。


