照れ笑いを浮かべてから、気を入れ直して料理の盛り付け。

里音が丁寧に見栄えをよくする方法を教えてくれる。



サラダをお皿に盛り付けていると、ひょいっと手が伸びてきた。


「美味しいね、このトマト」

半ば嫌味っぽく、目の前に現れた恋千くんが笑う。


わざと、調理を加えていないトマトを選んだのね。

どうせ摘み食いするなら、ちゃんと料理を食べて褒めてほしいのに。

つい、不満に頬を膨らましてしまう。



「拗ねてる顔も可愛いね、せ・ん・ぱ・い」

あたしの表情を見てからかうように言い捨てると、恋千くんは自分の定位置へと腰を下ろした。




完成した料理をテーブルへと、みんなで運ぶ。

トントンと階段を下りる足音に視線を向ければ、本を見つめたまま歩く誠の姿が。



「お昼にしましょう」

「そのつもりです。
……やけに昼食が豪華ですね」


栞を挟んでパタンと閉じられた本。

誠は呆れたようにため息をつく。



「料理の腕前を披露するのは構いませんが、全員で食べる分量を考えてください。
作りすぎては、もったいないでしょう。
毎回このようじゃ、いずれ品のレパートリーも減って───」

「今日だけだもの!
だから、大丈夫よ」