「・・・・・・」
十夜が黙って、自分の上着を差し出す。
「ありがと。十夜、あんたは後から来なさい。今のあんたを、月野ちゃんの傍にはいさせられない」
「・・・・・・あぁ」
月野に上着を着せて、椿は部屋を出る。
部屋を出たところに、小野瀬がいて、月野の体を軽々と抱き上げ、外に止めた車まで、運んでくれた。
「俺・・・・・・」
十夜は、気を失った桜太を見て、自分の手の平を見た。
まだ、うっすらと月野が爪で引っかいた傷が残っている。
月野を守ると言いながら、なんだ、この有様は。
桜太に襲われる月野の姿を見た瞬間、感情の波が押し寄せてきて、止められなかった。
こんな失態、ありえない。
「俺は、どうしたんだ・・・・・・?」
感情を抑え切れない、初めての感覚に、十夜は戸惑っていた。



