舌も切ったらしく、口の中に血の味が広がる。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
「桜太、くん?」
呼吸の荒くなる桜太に、月野が恐る恐る声をかける。
―――ゴクリ。
離れていても聞こえた、桜太の唾を飲む音。
瞳から、理性が消えている。
「あ・・・・・・」
「お姉さん、ちょうだい」
首筋に、桜太が顔を埋める。
軽く歯で噛むのは、まるでどこから血を吸おうか、品定めしているようで。
月野の呼吸が、恐怖で早くなる。
(やだ、やだっ。綾織くん! 綾織くん!!)
牙が、見えた。
尖った、血を吸うための牙が。
「あ、綾織くん!!」
叫んだ瞬間、勢いよく開け放たれた扉。
息を切らせ、乱れた制服姿の十夜。
「何をしている、お前」
ベッドに縛り付けられた月野と、そんな彼女に覆いかぶさる桜太。



