「誰もいないよ。僕とお姉さんだけ」
月野の希望を打ち砕き、桜太はまた笑った。
「お姉さん、ダンピールはヴァンパイアを救ってくれるんだよね?」
「・・・・・・?」
一瞬桜太が見せたのは、感情が含まれた、縋るような笑顔だった。
「お姉さんの肌って、綺麗だよね。白くて柔らかくて、なめらかで。・・・・・・美味しそう」
首筋からお腹まで、確かめるように桜太は指先でなぞる。
「こ、こういうこと、良くないと思うわっ」
「そうだね。でも、お姉さんが悪いんだよ」
「え・・・・・・?」
桜太は覆いかぶさり、耳元に唇を寄せる。
「こんなにも美味しそうな匂いさせて・・・・・・。ダンピールって、みんな、こうなのかな?」
「っ!」
桜太の手が、太ももに触れて、月野は思わず蹴ってしまった。
「ウッ!」
短いうめき声を上げて、桜太が月野から離れる。
「あ、ごめんなさ―――」
「ひどいんだね、お姉さん」
月野を見つめる桜太の目が、赤く光る。



