「やだなぁ、お姉さん。叫ばなくてもいいのに」
倒れ込む月野を見下ろして、男の子―――桜太は微笑む。
「捕まえた」
浮かべた微笑みは、とても綺麗だった。
頭が微かに痛む。
どこかにぶつけた?
うっすらと開いた瞳で、月野は痛む頭を見ようとするが、うまく体が動かせない。
足は動くけど、手の自由がきかない。
「な、何・・・・・・?」
ハッキリとしてきた視界に映ったのは、何故か頭上で縛られた自分の手だった。
「ここ、どこ?」
辺りを見回して見れば、ここは桜が美しい通学路ではなかった。
ましてや、外でもない室内だ。
(誰かの、部屋・・・・・・?)
月野の手はベッドに縛り付けられて、横たわっている状態だ。
部屋には机や本棚もあり、隅の方に船の模型が置いてある。



